芭蕉db

夜ル竊ニ虫は月下の栗を穿ツ

(俳諧向之岡)

(よるひそかに むしはげっかの くりをうがつ)

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 延宝8年9月13日、芭蕉37歳の作。この年17句が記録されている。

虫は月下の栗を穿

 今宵十三夜(栗名月とも言う)の月。この月光の下で虫たちは栗の実を食べ尽くそうと実の中にを這いまわっているのであろう。芭蕉前期の秀句の一つ。 この時期から天和年間にかけて、漢詩文調または佶屈調が多く目立つ。『荘子』への傾倒と深川隠棲という風狂姿勢と大いに関係があるのであろう。
 この句については、寿貞を芭蕉の愛人(妾)として、栗を彼女にたとえ、虫を甥の桃印にたとえて、ふたりの間の不倫関係を詠んだとする文字通り穿った解釈があるが採らない。