芭蕉db

富士の風や扇にのせて江戸土産

(蕉翁全伝)

(ふじのかぜや おうぎにのせて えどみやげ)

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 延宝4年6月、33歳。伊賀上野に帰郷の途路、富士を見た。一句は、伊賀上野到着後、市隠<しいん>宅にて歌仙があった折の作。挨拶吟だったのであろう。なお、この伊賀帰郷の際の作品は7句残っている。

富士の風や扇にのせて江戸土産

 市隠宅での歌仙に招かれて、土産の扇子を差し出してこの句を挨拶吟としたのであろう。土産といって何もありませんが、この扇子に富士の風が載せてあります。これを煽ると富士の風が届くことでしょう、とでも言ったのではないか。軽妙な明るい作品。