芭蕉db

田や麦や中にも夏のほととぎす

(雪まるげ)

(たやむぎや なかにもなつの ほととぎす)

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 元禄2年4月7日。『奥の細道』旅中、那須の黒羽桃雪亭での作。「山も庭に動き入るるや夏座敷」も参照。

田や麦や中にも夏のほととぎす

 『曾良書留』には、「白河の関やいずことおもふにも、先づ、秋風の心に動きて、苗緑に麦あからみて、粒々に辛きめをする賎がしわざも目に近く、すべて春秋のあはれ、月雪のながめより、この時はやや卯月のはじめになん侍れば、百景一つをだに見ことあたはず。ただ声をのみて筆を捨つるのみなりけらし」と詞書がある。句の解釈はこれに込められているのだろうが、表向きは、緑の田と黄ばんだ麦の畑が目に入る夏の景色の中で、ホトトギスの声が一段と夏の気を彩っていることだ、ぐらいの意。地域を誉めた挨拶吟と見てもよい。
  なお、ホトトギスと郭公についてはここを参照。


栃木県那須郡黒羽町黒羽旧桃雪亭跡。牛久市森田武さん提供