芭蕉db
   霞

大比叡やしの字を引いて一霞

(六百番俳諧発句合)

(おおひえや しのじをひいて ひとがすみ)

大比叡やしを引き捨てし一霞

(彼これ集)

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 延宝5年、芭蕉34歳の時の作。芭蕉は、この年に俳諧宗匠として立机(プロの俳諧師になること)したらしい。この年22句が現存する。

大比叡やしの字を引いて一霞

 比叡山に霞がかかっている。「し」の字を一気に引いたような霞だ。このしの字は、霞だから横にたなびいている。
実は、縦に引いた「し」の字の話には、一休咄の中に、一休が比叡山の僧侶等に大きな字を所望され、比叡山から麓の坂本まで「し」の字を書いたというのがある。芭蕉の頭にはこのことがあったのであろう。ただし、この句は江戸での作で見た景ではない。