芭蕉db

佐夜中山にて

命なりわづかの笠の下涼み

(俳諧江戸広小路)

(いのちなり わずかのかさの したすずみ)

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 延宝4年夏。33歳。芭蕉二度目の帰郷の折、小夜の中山での作。ここは西行にゆかりの歌枕であってみれば、芭蕉としては必ず一句詠まなくてはならないらしい。貞亨元年には『甲子吟行』で「馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり」と詠んでいる。なお、この伊賀帰郷の際の作品は7句残っている。

命なりわづかの笠の下涼み

 西行の「命なりけり」ではないが、いまその佐夜の中山を通過していると、ここには木陰が全くない。喉は渇き、猛暑は容赦ない。まさに「命なりけり」だが、その命ときたらまさに傘の下の日陰の中にかすかにあるというだけの塩梅だ。