芭蕉db

富士の山蚤が茶臼の覆かな

(銭龍賦)

(ふじのやま のみがちゃうすの おおいかな)

山の姿蚤が茶臼の覆かな

(蕉翁全伝)

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 延宝4年、芭蕉33歳の時の作。なお、この伊賀帰郷の際の作品は7句残っている。

富士の山蚤が茶臼の覆かな

 富士の山は茶臼のような格好をしている。茶臼とは抹茶を引く石臼のことで、普通の石臼と比べて上層部(回転部)が下層部(固定部)に比べて以上に高い構造の臼。富士の形はこの茶臼のようだというのは古来言い古されてきた。また、「蚤が茶臼」というのは、分不相応なほどの夢や希望をもつことの表現として使われるが、ここではその意味は無くて定型句として茶臼を表現しているだけらしい。つまり、一句は富士の山の形は茶臼に覆いをかけたような形であるといっているのである。それでも、この富士を見る旅は、芭蕉にとって江戸で俳諧宗匠として立机しようという決意の旅でもあって心に期する「蚤が茶臼」の高揚した気分があったかもしれない。