芭蕉db

よるべをいつ一葉に虫の旅寝して

(俳諧東日記)

(よるべをいつ ひとはにむしの たびねして)

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 延宝8年、芭蕉37歳の作。この年17句が記録されている。

よるべをいつ一葉に虫の旅寝して

 「一葉」は桐一葉で、本格的な秋が来る前に桐はあの大きな葉を落とすところから、初秋の季語として広く使われていた。その桐の葉に虫がついていたのだが、それが水に落ちて漂っている。いつの日に寄る岸辺を得るのであろうか、というのがこの句の主意。
 芭蕉にとって深川隠棲の時期だけに漂白感ただよう句のようにも聞こえるが、典型的談林俳諧で特に深みのあるものというわけではない。「寄る辺定めぬ浮船の・・」といった古来漂白の人生を表現するのに 使い古された典型的で様式化された言い回しを用いたに過ぎない。