芭蕉db
  二月吉日とて是橘が剃髪、入
  門を駕す

初午に狐の剃りし頭哉

(末若葉)

(はつうまに きつねのそりし あたまかな)

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 元禄6年、50歳。ここに是橘<ぜきつ>は、其角の従僕であったが、其角の父東順に医学を学ぶこととなった。この時の門出を祝福した一句。
 初午は稲荷大明神の祭典の日、2月最初の午の日に行われる。 春の農耕に起源を持つ祝祭行事で豊穣を祈願する祭典だが、転じて商売繁盛・子孫繁栄などに転化して 現代に至る。また、稲荷神社は狐が遣い手と言われ「正一位」などと位階を頂戴している。 京都伏見稲荷神社が全国稲荷神社の総社で、西暦711年(養老4年)2月7日の創建とされ、この日が初午だった伝えられている。

初午に狐の剃りし頭哉

 是橘が医門に入った。そのために髪を切ってつるつるの頭をしている。今日は初午だが、きっとこの頭は稲荷神社の狐が是橘を騙して剃り落としたにちがいない。是橘をからかいながら、祝言を述べ、当人も周囲も明るく笑っている情景が思い浮かぶ佳句。 狐についてはここを参照。