芭蕉db
   加賀の国を過ぐるとて

熊坂がゆかりやいつの玉祭

(笈日記)

(くまさかが ゆかりやいつの たままつり)

熊坂がその名やいつの玉祭

(曾良書留)

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 元禄2年7月15日。『奥の細道』旅中、越中から加賀の国の国境付近で詠んだらしい。石川県国江沼郡三木村生まれと伝えられる盗賊熊坂長範を思い出して一句。謡曲『熊坂』参照。
 熊坂長範は、平安時代末期の大盗賊。美濃の国赤坂の宿で金売吉次を襲ったところを源義経に討たれたと伝えられている。

熊坂がゆかりやいつの玉祭

 玉祭=魂祭は盂蘭盆会のこと。ここ加賀の熊坂を旅しているとあの義経に討たれたという盗賊熊坂長範を思い出す。人はみな死んでも盆にはゆかりの者達に迎えられて魂が慰められるというのに、大盗賊の汚名を恐れて誰も長範の魂を慰めてやるものとて無いことだろう。一体何時になったら長範ゆかりの人々に盆火で暖かく迎えられることだろう。