芭蕉db

嵯峨日記

(4月28日)


二十八日

夢に杜國*が事をいひ出して、悌泣して覚ム*

心神相交時は夢をなす*。陰盡テ火を夢見、陽衰テ水を夢ミル*。飛鳥髪をふくむ時は飛るを夢見、帯を敷寝にする時は蛇を夢見るといへり*。 睡枕記*、槐安國*、荘周夢蝶*、皆 其理有テ妙をつくさず*。わが夢は聖人君子の夢にあらず。終日 忘(妄)想散乱の氣、夜陰夢又しかり。誠に此ものを夢見ること、所謂念夢*。我に志深く伊陽旧里*迄したひ来りて、夜は床を同じう起臥、行脚の労を ともにたすけて、百日が程かげのごとくにともなふ。ある時はたはぶれ、ある時は悲しび、其志我心裏に染て、忘るゝ事なければなるべし。覚て又袂をしぼる。


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 杜國はこの前年の元禄3年2月20日、配流の地渥美半島保美の里で34歳の若さで死去。杜國は、一年後にもこうして芭蕉の夢に出てきたのである。芭蕉と杜国の関係が師弟以上のもであったとする俗説はここに由来する。