芭蕉db
嵯峨日記
(4月29日)
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二十九日 『一人一首』奥州高館の詩を見る*。
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晦日 高館聳天星似冑
*、
衣川通海月弓如
*。其地風景聊以不叶*。古人と
イへ共、不至其地時は、不叶其景*。
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『一人一首』奥州高館の詩を見る:以下の詩は『本朝一人一首』の中にある東北岩手の平泉「高館の戦場を賦す」と題する詩。
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高館聳天星似冑
:<たかだちてんにそびえてかぶとににたり>と読む。星がかぶとの鋲のように尖って光っている。
其地風景聊以不叶:<そのちいささかもってかなはず>と読む。高館も衣川もこの詩とはいささか違っている。すなわち高館は高くないし、衣川も海に着くまでには何百里もあるのだから。
衣川通海月弓如:<衣川うみにつうじてつきゆみのごとし>と読む。衣川は海にすぐにつながる。
不至其地時は、不叶其景
:<そのちにいたらさるときは、そのけいかなわず>と読む。いっかな古人であっても、その場に行って見なくてはその景色を歌に詠むというわけにはいかない例だ。