三冊子

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三冊子序

 

天地人の三才より、和哥に三鳥の名にたちて、連誹に三物の祝ひごともめでたき御代のためしなれば*、三都はいふもさらにして*、いかなる鄙のすみたにも、家三ツあれば風人なきというふ事なし。されば、此三草紙も伊賀の土芳叟が隨聞記なるを、翁滅後三十年はいさしらず、半三十年は忘れ水の別名のごとく、後三十年は蠧のために朽ぬ。ちか比たまたま此書を得る輩は、玉のごとくこがねのごとく函底梓にちりばむに、もとより乙文の才なければ、五車韵瑞のほまれもなく、郝驍ェ腹中にもあらざれば、日に曬のたかぶりもなし。筆をとるにいとものうければ、三伏の夏すぎ、初秋の涼しき比、おもむき而己をかく述るものなりけらし。

  安永五丙申                                        半化房

                                               闌 更

参考文献

中村俊定・山下登喜子校註:『三冊子 改訂増補版』笠間書院(平成5年4月)

頴原退蔵校訂:ワイド岩波文庫『去来抄・三冊子・旅寝論』岩波書店(2005年12月)