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予が初學 の時、ほ句の仕やうを窺けるに、先師曰、ほ句ハ句つよく、俳意たしかに作すべしと也。こゝろ見に此句を賦して窺ぬれ バ、又是にてもなしと大笑し給ひけり*。
夕涼み疝氣おこしてかへりけり:「疝気」とは漢方で、下腹部や睾丸がはれて痛む病気の総称(『大辞林』)で、芭蕉はこれを持病としていた。現代にはこの病気は無い、存在しないのではなくて病名が分化して消えてしまっただけ。発句は強くという芭蕉のアドバイスで作った全く初学の句。
又是にてもなしと大笑し給ひけり:これは句じゃないよと大笑されてしまった。