芭蕉db

奥の細道

石巻  元禄2年5月10日・11日)


 十二日*、平和泉*と心ざし、あねはの松・緒だえの橋*など聞伝て、人跡稀に雉兎蒭蕘*の往かふ道そこともわかず、終に路ふみたがへて、石の巻といふ湊に出。「こがね花咲」*とよみて奉たる金花山*、海上に見わたし*、数百の廻船入江につどひ、人家地をあらそひて、竈の煙立つヾけたり。思ひかけず斯る所にも来れる哉と、宿からんとすれど、更に宿かす人なし*。漸まどしき小家に一夜をあかして、明れば又しらぬ道まよひ行。袖のわたり・尾ぶちの牧・まのゝ萱はら*などよそめにみて、 遙なる堤を行。心細き長沼にそふて、戸伊摩*と云所に一宿して、平泉に到る。其間廿余里ほどゝおぼゆ。


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表紙 年表


kaisetsu.gif (1185 バイト)

 5月10日(陽暦6月26日)。快晴。宮城郡松島町高城、東松島市小野・矢本を経由して石巻市に行く。途中後述のような、白湯が飲めないというような事件があったが、無事石巻には着いた。ここで小雨が降る。すぐに止んだので日和山に登り、ここから石巻中を眺めることができた。渡波、遠島、牧山などを見渡し、また真野の萱原も少し見えた。山から下って北上川近くの住吉神社に参詣。住吉神社の鳥居の前が 「袖の渡り」である。
 5月11日。天気晴。 旅宿「四兵へ」を出発して、石巻市新田町鹿又で旧北上川を舟で渡り、追波川(おっぱがわ=心細き長沼)に沿って石巻市飯野川町へ。北上川に沿って登米市津山町柳津 を経由して登米市登米町<とめしとよまちょう>の権断庄左衛門(権断屋敷)に宿泊。
 5月12日。天気曇。登米を出発。途中から雨に変わる。国道342号線にほゞ沿って登米 市中田町上沼新田から岩手県一関市花泉町涌津へ。ここに着く頃から雨強く、馬に乗り花泉町金沢を通って一関市街に到着。強雨は合羽を通すぐらいのものであった。この夜は一関に宿泊。


日和山にある芭蕉と曾良の像 (写真提供:牛久市森田武さん)


夜明けの金華山全景


2011.3.11東日本大震災で被災した「袖の渡り」