芭蕉db
笈の小文
(道中)
旅の具多きは道ざはりなりと、物皆払捨たれども、夜の料にと 、かみこ壱つ、合羽やうの物、硯、筆、かみ、薬等、昼餉
*
なんど物に包て、後に背負たれば、いとヾすねよはく、力なき身の跡ざまにひかふるやう
*
にて 、道猶すゝまず、たヾ物うき事のみ多し。
草臥て宿かる比や藤の花
(くたぶれて やどかるころや ふじのはな)
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表紙
年表
『奥の細道』の
千住
でもほぼ同一の記述がある。
草臥て宿かる比や藤の花
4月11日、八木での吟。この記述は時間的異動があって、この条は時間的には吉野よりもっと後になる。であれば藤の花は春の季題で季節的に合わなくなる。そこでここへ持ってきたのであろう。杜国と会って元気になった気分がここで萎えているのも附合しない。事実、この句の初出は「ほととぎす宿かる頃や藤の花」であり、これだと季題は「ほとぎす」が優先して、(藤の花の春と混乱しているものの)夏になる。
「草臥れて・・」の句碑(天理市三昧田町山街道で、森田武さん撮影)
跡ざまにひかふるやう:後ろのほうに引っ張られているようでの意。
昼餉:<ひるげ>と読む。