芭蕉db

奥の細道

(草加)


 ことし元禄二とせにや*、奥羽長途の行脚*、只かりそめに思ひたちて、呉天に白髪の恨を重ぬ*といへ 共、耳にふれていまだめに見ぬさかひ*、若生て帰らばと定なき頼の末をかけ*、其日漸草加*と云宿にたどり着にけり。痩骨の肩*にかゝれる物先くるしむ。只身すがらにと出立侍を、帋子一衣は夜の防ぎ*、ゆかた・雨具・墨・筆のたぐひ、あるはさりがたき餞*などしたるは、さすがに打捨がたくて、路次の煩となれるこそわりなけれ*


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表紙 年表

草加の松並木

芭蕉と曾良が宿泊せず通り過ぎた草加の宿、今なお、当時の面影を色濃く残す。(写真と文提供:牛久市森田武さん)