芭蕉db

笈の小文

(其角亭餞別会)


 神無月の 初*、空定めなきけしき、身は風葉の行末なき心地して*
 

旅人と 我名よばれん 初しぐれ

(たびびとと わがなよばれん はつしぐれ)

又山茶花を宿々にして

(またさざんかをやどやどにして)

 岩城の住、長太郎と云もの*、 此脇を付て其角亭*におゐて関送*せんともてなす。

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表紙 年表


旅人と 我名よばれん初しぐれ

 『野ざらし紀行』における句「野ざらしを心に風のしむ身かな」と比較した時、その精神的余裕は大変な相違である。『野ざらし』の頃と比べて芭蕉は既に十分有名であったし、これから先の伊賀までの旅路には多くの蕉門の弟子たちが師の訪れるのを手ぐすね引いて待っている。
 「時雨」は、「定めなきもの」の象徴としてここに提出されているが、悲壮感はない。むしろ、この旅は、「西行の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、・・・」尊敬する旅人達と自分との対比を意識するぐらいの心境ではないか。


旅人とわが名呼ばれん初しぐれ」の画讃


都下町田市成瀬街道にある句碑。なぜこんなところにあるのか?(牛久市森田武さん撮影)