深川芭蕉庵から江戸在勤の大垣門弟此筋・千川に宛てた書簡。此筋・千川からの贈り物や大垣藩の門弟たちからの芳志への礼の伝言依頼などを、句会の翌日に認めたもの。
御連翰、殊麦一器、荊口老御手作、誠御厚志、賞玩可レ仕候:<ごれんかん、ことにむぎいっき、けいこうろうおんてづくり、まことにごこうし、しょうがんつかまつるべくそうろう>と読む。「御連翰」は、此筋・千川二人の連署の手紙のこと。「荊口」は此筋・千川兄弟の父。お二人連署の御手紙、又殊に麦一箱、また父上荊口の俳句、まことにそのお志を賞賛すべきものであります、と言った意味。
春に成候而御礼可二申進一候:<はるになりそうろうておんれいもうししんずべくそうろう>と読む。年が明けたら御礼を申し上げに参ります、の意。
昨日風故参様遅引、得二御意一候間もすくなく、御残多:<きのうかぜゆえまいりようちいん、ぎょいをえそうろうまもなく、おのこりおおし>。昨日は風邪のため句会への参加が遅れ、お話する時間も少なく心残りでございます、の意。
洒仝(堂)他出申候間、帰候はゞ御手紙相わたし可レ申候:<しゃどうたしゅつもうしそうろうかん、かえりそうらはばおてがみあいわたしもうすべくそうろう>と読む。洒堂が外出中ですので未だ渡していませんが帰り次第御手紙を渡します、の意。なお、前便までは珍碩または珍夕とあるのがはじめて洒堂となっているので、この頃俳号を変えたものと思われる。
義(儀)太夫殿御発句判料被レ遣候に付、御手紙可レ被レ下候:<ぎだゆうどのおほっくはんりょうつかわされそうろうにつき、おてがみくださるべくそうろう>と読む。「義太夫」は上田涼葉、大垣藩士。涼葉が、桃隣に判料を此筋・千川経由で芭蕉に渡したのであろうか? そこで改めて義太夫から桃隣宛に手紙を書いてくれたら、それと一緒に判料を桃隣に渡すということらしい。
昨日之御報にて御座候間、再報に不レ及候間、可レ然奉レ頼候:<きのうのごほうにてござそうろうあいだ、さいほうにおよばずそうろうかん、しかるべくたのみたてまつりそうろう>と読む。昨日涼葉には手紙を書いたばかりなので、もう一度出すことはしませんから、貴方からよろしく頼みます、の意。
春可レ被二召寄一之由、忝奉レ存候:<はるめしよせらるべきのよし、かたじけなくぞんじたてまつりそうろう>と読む。新春には句会にお招き下さるとの事、忝く思っています、の意。
通二御伝一、大舟丈御手前夜前之一器、為レ持被レ下候:<おんつたえのとおり、たいしゅうじょうおてまえやぜんいっき、もたせくだされそうろう>と読む。お伝えしたとおり、大舟が昨夜たてたお茶道具一式を持ってきてくれました、の意。
是も前宵御礼申上候。貴報右同然:<これもぜんしょうおんれいもうしあげそうろう。きほうみぎどうぜん>と読む。これには前夜御礼を言っているので申し上げませんし、貴方についても同様に御礼を申し上げません、の意。
左柳丈御伝言御心得可レ被レ下候:<さりゅうじょうごでんごんおこころえくださるべくそうろう>と読む「左柳」は大垣藩士浅井弥兵衛。左柳へのご伝言のことよろしくお願いします、の意。
折節風故、持病心に御座候故、早々及二貴報一候:<おりふしかぜゆえ、じびょうこころにござそうろうゆえ、そうそうきほうにおよびそうろう>と読む。風邪を引いたらしく、持病が心配ですので、末筆のまま、の意。
、の意。