膳所義仲寺の新庵から京都の去来に宛てた書簡。伊賀上野の兄への資金提供のお礼、届けられた薬や杖の謝礼など。また、名古屋から上京中の野水への伝言などが書かれている。去来宛なのに俳諧のことが殆ど書かれていないのが特徴。
薬種六色・桂(挂)杖相届申候:<やくしゅむついろ、しゅじょうあいとどきもうしそうろう>と読む。挂杖は禅宗の僧侶が持つ杖のこと。去来が贈呈したもの。
其後みの御つゝしみ可レ被レ成旨、大悦に存候:<おみのおんつつしみなさるべきむね、だいえつにぞんじょそうろう>と読む。『猿蓑』編集の後休息を取るといっていましたが、大変うれしく思います、の意。
猶流布ひそかに御聞合可レ被レ成候:<なおるふひそかにおききあわせなさるべくそうろう>と読む。『猿蓑』の頒布については急がずゆっくり門人達に聞きながらやったらよろしい、の意。
先被レ懸二芳意一候金、伊賀より小者指越候。同名方へ遣し候間:<さきにほういにかけられしかね、いがよりこものさしこしそうろう。どうみょうがたへつかわしそうろう>と読む。去来に融通してもらったお金は、伊賀上野から小者がやってきたので、兄宅へ持たせてやりました、の意。
別而能時節と不レ浅大悦に存候故、其元迄申進じ候:<べっしてよきじせつとあさからずだいえつにぞんじそうろうゆえ、そこもとまでしんじそうろう>と読む。この当時、決算期は盆の7月15日であったので、お金を渡すのによいタイミングであったというのである。それゆえとてもうれしいので其の事を申し上げます。
野水上京之よし荷兮より申来候:<やすいじょうきょうのよしかけいよりもうしきたりそうろう>と読む。野水も荷兮も尾張蕉門の人。その野水が京都にいることを荷兮が手紙で教えてきたのであろう。
此事御尋被レ下候へと先日申進じ候:<このことおたずねくだされそうらえとせんじつもうししんじそうろう>と読む。野水が京都にいることを確認して欲しいという手紙を先日貴方に出したのですが、の意か?。
追付下り候哉、逗留申候哉、承度存候:<おっつけくだりそうろうや、とうりゅうもうしそうろうや、うけたまりたくそうろう>と読む。野水がそのまま京都に長逗留するのか、それとも尾張に帰るのか、知りたい、の意。
下りにて候はゞ一宿之様に立寄申候へと御つたへ可レ被レ下候:<・・・いっしゅくのようにたちよりもうしそうらえと・・くださるべくそうろう>と読む。名古屋へ帰るのなら義仲寺の新庵に泊っていくように御伝え願いたい、の意。
逗留候はゞ盆後上京之次手逢申度候:<とうりゅうそうらわばぼんごじょうきょうのついでにあいもうしそうろう>と読む。京都に滞在しているのなら、私が盆後に上京したときにそちらで会いたいものです、の意。