点内見:<てん ないけん>と読む。去来が前便で報告してきた評点(批点という)について、それを芭蕉は見たという意味。「内見」は拝見の意。批点はその他に「合点」ともいう。
近比○:<ちかごろのひょうばん>と読む。○は、「評判」の記号で、加点を意味し、○を付ける風習がこの頃流行し始めた。これを「驚入候<おどろきいりそうろう>」というのである。
六七分迄の事には、惣而批言御書なきがよく候間、内々左様に御意得可レ被レ成候:<ろくしちぶまでのことには、そうじてひごんおかきなきがよくそうろうあいだ、ないないさようにおこころえなさるべくそうろう>と読む。6、7分の出来栄えの作品には批評を加える必要はありませんので、そのように以後お考えなさい、の意。
此巻惣而さのみ見所もなく:<このかんそうじてsのみみどころもなく>と読む。去来が寄せた作品は全体としてよいものは無い、の意。
心一ぱいに点引なぐり可レ被レ遣候:<こころいっぱいてんひきなぐりつかわさるべくそうろう>と読む。よい点など付けるような作品ではない、のい。芭蕉には珍しい乱暴な表現である。
近々他の地へ巣を移し可レ申候:<きんきんたのちへすをうつしもうすべくそうろう>と読む。幻住庵を出るという予告である。本書簡は、追伸の形式のため日付を欠くが、「近々」と、全体の内容からして幻住庵を出る元禄3年7月23日に近い日付を推測している。
江戸状参候はば御届可レ被レ下為:<えどのじょうまいりそうらわばおとどけくださるべくそうろうため>と読む。江戸からの手紙を回送して頂くために、の意。
且御左右も互可レ承候間:<かつおそうもたがいにうけたまわるべくそうろうかん>と読む。かつ、貴方の様子も知りたいので、の意。
いづれの地に而も落付候方より、便り之處御しらせ可レ申候:<・・・ちにてもおちつきかたより、たよりのところおしらせもうすべくそうろう>と読む。上記のような理由で、何処へ落着いても貴方には居所をお知らせします、の意。
猶書状に而可二申盡一候:<なおしょじょうにてもうしつくすべくそうろう>と読む。加生夫婦の御厚情については別便で御礼は申し上げます、の意。言外に、去来からも礼を言っておいてくれという意味が込められている。
筆端断りに不レ及候へ共、心底には不レ浅事に存候:<ひったんことわりにおよばずそうろらえども、しんていはあさからざることにぞんじそうろう>と読む。貴方のご厚意については、常日頃理解し逢っていることですから、改めて謝意を申し上げませんが、心の底から感謝をしています、の意。