京都落柿舎から膳所の曲水宛に書いた書簡。日付を欠く。初秋には膳所に行くこと、曲水の健康は大丈夫かと尋ねている。この3日後には寿貞尼が死亡するのだが、勿論芭蕉の知る由も無い。
其元静に成可レ申と奉レ存候:<そこもとしずかになりもうすべくとぞんじたてまつりそうろう>と読む。そちら膳所もようやく静かになったことでしょう、の意。参勤交代で藩主が江戸に帰ったことをいう。
爰元いまだ五七日も逗留可レ仕候而:<ここもといまだごしちにちもとうりゅうつかまつるべくそうろうて>と読む。私は、この後約一月ほどここ嵯峨にいますが・・、の意。
貴辺へ罷出、可レ得二貴慮一候:<きへんへまかりいで、きりょをうべくそうろう>と読む。その後で、膳所に行ってお会いしたいと考えています、の意。
洒堂・之道など見舞に参、久々にて遂二面話一候:<しゃどう・しどうなどみまいにまいり、ひさびさにてめんわをとげそうろう>。洒堂・之道は、閏5月落柿舎で開かれた歌仙に参列している。この頃両者には軋轢が発生していた。
貴様にも先日少々御気草臥之躰に相見え候。甚暑御保養可レ被レ成候:<きさまにもせんじつしょうしょうおきくたびれのていにあいみえそうろう。じんしょおんほようなさるべくそうろう>と読む。あなたさまも先日は少しくたびれているようでしたが、暑さの折、お体をお厭いください、の意。