芭蕉db

岸本八郎兵衛(公羽)宛書簡

(元禄6年3月5日 芭蕉50歳)

書簡集年表Who'sWho/basho


    岸本八郎兵衛様                芭蕉
人々御中
 
昨夜膳所より書状参候*。呂丸追前(善)之句とて告こし申候。定而段々申越と相見え候へ共、道にて滞候而、いまだ先書不下と相聞候*。兎角必定仕たる事と奉存候*。左様に御意得被成、若御屋敷之内、類縁之御方なども御座候はゞ、御しらせ被成被下候*。 以上
三月五日

 深川芭蕉庵から、山形鶴岡の門人公羽宛に出した呂丸客死の第一報書簡。呂丸は、死去したらしい。らしいというのは、膳所に帰った洒堂から届いた書簡では、呂丸追善句会の内容が書かれていて、死去の第一報が未着なのである。この段階で、芭蕉は呂丸と同郷の門人である公羽に呂丸の死を知らせている。実に手際がよいが、こういうところにビジネスにも経験を有する芭蕉の才覚が垣間見えるのかもしれない。なお、このとき公羽は江戸在勤であった。