徒然草(下)

第197段 諸寺の僧のみにもあらず、定額の女孺といふ事


  諸寺の僧のみにもあらず、定額の女孺といふ事、延喜式に見えたり*。すべて、数定まりたる公人の通号にこそ*

定額の女孺といふ事、延喜式に見えたり:<じょうがくのにょじゅということ、えんぎしきにみえたり>と読む。「定額」は延喜式で定められた「公務員定数」で、寺で言えば国分寺・国分尼寺・官寺や勅願寺などに配分される下級僧の定員。同様に宮廷に配分された下級の女官を「女孺<にょじゅ>」と呼んだ。「延喜式」は、弘仁式・貞観式以降の律令の施行細則を取捨・集大成したもの。50巻。三代式の一。延喜5年(905)醍醐天皇の勅により藤原時平・忠平らが編集。延長5年(927)成立。康保4年(967)施行。(『大字林』より) 。

すべて、数定まりたる公人の通号にこそ:これ(女)は、国家公務員として定員化された「公務員」の役職名だ。


 今の日本国の役人天国の構造がいかに、律令国家伝来のものであるかがよく分かるであろう。


 しょじのそうのみにもあらず、じょうがくのにょじゅということ、えんぎしきにみえたり。すべて、かずさだまりたるくにんのつうごうにこそ。