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玉棚のおくなつかしやおやのかほ

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玉棚のおくなつかしやおやのかほ   去來

初ハ面影のおぼろにゆかし玉祭と云句也。是時添書に、祭時ハ神いますが如しとやらん。玉棚の奥なつかしく覺侍る由を申*。先師いがの文曰、玉まつり尤の意味ながら、此分にてハ古びに落可申候*。註に玉だなの奥なつかしやと侍るハ、何とて句になり侍らん*。下文字和かなれば下をけやけく、親のかほと置ば句成べしと也*。そのおもふ處直に句となる事をしらず。ふかくおもひしづみ、却て心おもく詞しぶり、或は心たしかならず*。是等は初心の輩の覺悟あるべき事也。