芭蕉db

奥の細道

塩竈・元禄2年5月9日)


 早朝、塩がまの明神に詣*。国守*再興せられて、宮柱ふとしく*、彩椽*きらびやかに、石の階九仞に重り*、朝日あけの玉がきをかゝやかす。かゝる道の果、塵土*の境まで、神霊あらたにましますこそ、吾国の風俗なれと、いと貴けれ。神前に古き宝燈有。かねの戸びらの面に、「文治三年和泉三郎*奇進」と有。五百年来の俤、今目の前にうかびて、そヾろに珍し。渠は勇義忠孝の士也*。佳名今に至りて、したはずといふ事なし。誠「人能道を勤め、義を守るべし。名もまた是にしたがふ」*と云り。
 日既午にちかし*。船をかりて松島にわたる。其間二里余、雄島の磯*につく。


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表紙 年表


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 芭蕉と曾良の二人は前日塩竈に到着して、周辺を散策し、夜は鹽竈神社近くの法蓮寺門前の宿「治平」に投宿した。ここへは仙台の加右衛門の紹介状があった。
 明けて5月9日は五月晴れの快晴。早朝、鹽竈神社などを拝観した後、正午には船に乗って松島に渡ったのである。


東北地方最大の規模を誇る鹽竈神社 (写真提供:牛久市森田武さん)

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鹽竈神社の宝塔伊藤直樹氏撮影
 

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「宝塔」の解説文伊藤直樹氏撮影