俳諧書留

山中温泉及びそれ以外

目次

奥の細道山中温泉へ 山中温泉へ


   山中ノ湯

山中や菊は手折らじ湯の薫      翁

秋の哀入かハる湯や世の氣色    ソラ

雲霧は峯の梢をつたへ來て

やがて時雨るゝ秋の山里

捨し身もいでゆの山にめぐり來て

よハひをのぶるかずにこそ入れ

しるしらぬ往來ひまなきゆの山に

うき世のさまを見する成けり

抱あげらるゝ藤の花ぶさ

行春を扇に酒を扨あひて

皮たびの裏新敷踏すめり

手を引ずりて上座定る

名殘とて取置ひなの顔を見て

又泣入し癆咳のせき

もえかねる水風呂の下燒付て

ひらき戸あをつろじの細あいの?

右左り膳をすえてもさびしくて

何ニもかニもうきハかね房

庵寺の縁にうすべり打しきて

斗て渡す藥代の大豆

古寺や花より明るきんの聲

縁のざうりのしめる春雨

石ぶしに小鮎のちりをより分て

  花も奧有とかやよし野に深く吟じ入て、

大峯やよし野ゝ奧の花果

春の夜ハ誰か初瀬の堂籠り

むつかしき拍子も見えず里神樂

海風に巴を崩す村千鳥

いづくにかたふれ伏共萩の原

なつかしやならの隣の時雨哉

   全昌寺ニテ

終夜秋風聞や裏の山

   嵯峨

破垣やわざと鹿子の通路

   幻住庵

凉しさや此庵さへ住捨

   松崎 向ノヨキ 
千那本福寺ニ宿シテ

足音もはるけき廊の下凉

   六月十一日、石山ニ宿。

 あやにくにすがれて勢田の螢哉

    元禄二年七月廿九日 書之
   再來ノ時ノ句。會有。

爪紅粉ハ末つむ花のゆかり哉 

 貞室若クシテ彦左衞門ノ時、未廿餘トカヤ、
 加州山中ノ湯ヘ入テ、泉や又兵衞ニ被進
 俳諧ス。甚恥悔、京ニ歸テ始習テ名人トナ
 ル。(一兩年過テ、來テ俳モヨホスニ、所ノ者
 布而習之。)以後、山中ノ俳點領ナシニ致遣
 ス。(又兵ヘハ)今ノ久米之助祖父也。

  乘井、石K左兵へ、本龍寺。
  福嶋郷ノ目村、神尾庄衞門。
 同入江野村、中村岡衞門。

 小藪、服部藤次、尺山。
 大坂立賣堀北がわ三丁目、
 河内や(三池名字)市兵
 衞。霜月住。正・二月同。

  高須、秋江村、渡部幻節。松因−大井彌平次。

 高須、大坂や長衞門。

  遊行六・七世

かく迄ハ誰かおもハんきさがたの汐干汐満月のながを

所から旅寝もよしやきさがたのあまのとまやまバらなれども

名取川ニ而つぎうた

吾ひとり今日のいくさに名取川   頼朝

 吾もろともにかちわたりせん     梶原

ミちのくのせいはミかたにつくも橋わたしてかけんやすひらがくび  梶原

  居待の月、門井居て

天の戸や夜半にほとほと時鳥 

  柏原、父新兵へ、暮山。
  南部七良兵へ、江水。  吉村左平次

白河の關やを月のもる影は人の心をとむる也けり    西行

(集不知)
白河の關路のさくら咲にけり東より來る人のまれなる  同

(名所三百首之内)
白河のせきのヽ守いさむともしぐるゝ秋の色ハとまらじ 家隆

(集不知)
雪の色ハまだ白河の関の戸にあけぼのしるく鶯の聲   同

(名所三百首之内)
白河の関のしら地のからにしき月に吹しく夜半の凩   定家

(全昌寺)湛澄師  白印  湛照

(江戸白泉寺)了山。 大津舛や丁、江左三益、尚白。
 膳所魚や丁、いせや孫右衞門、

(家中椿原、鳥井金衞門。) 同所中ノ庄、
寺西不閑(ニ而)珍夕(林甫甥也。)。
つるがとうじが橋、出雲や彌市良。
彌左衞門町、万や半兵へ−甚衞門−用左衞門。
吉崎、肝炒。かゞヽ野ゝ市や五右衞門。
小四良。