芭蕉db

東藤・桐葉宛書簡

(貞亨3又は4年3月14日 芭蕉43又は44歳)

 

書簡集年表Who'sWho/basho


一、御俳諧よくぞやおもひ切て長々敷物を点被仰越*。乍去余感心*、見るも面白く、判詞不*手の舞足の踏事をしらず候。ケ程上達存もよらず*、凡天下の俳諧*にて御座候間、随分御敬候て御はげみ可成候*。秋登り候はヾ、一板行とすゝみ申候*。処々根深き句ども見え申候而天晴御作*、愚耄僻耳投筆計に御座候*。句評之事、点は相違有物にて御座候*。其元に而俤ある事、爰元にては新敷*、其地にて珍しき句、此地に而は類作有様の事も御座候物に御座候へば、句評は心にたがふ事も可御座*。和歌の三神*、前後の点数かぞへ見不*、いづれの勝負しらず候。此処におゐて指南一言も無御座候。只自是行先大切に御座候間、能々御心をめぐらし、御工案御尤存候。句作に作をこしらへ*、句毎に景をのみ好候はヾ頓而古く成るべし*。めづらし過候はゞ、飽心出可*、こしやくに成候はゞ、後句石で手をつめたるやうになるべし*。俳諧地をよく御つヾけ被成、処々風景句作ほのか成やうにあれかしと、此後の事を被存るゝのみに御座候。此外申事無御座候へば不*。 頓首
    三月十四日            芭蕉庵桃青
 東藤子雅丈
 桐葉子雅丈     

 東藤・桐葉。