芭蕉db

曲水宛書簡

(元禄3年9月12日 芭蕉47歳)

 

書簡集年表Who'sWho/basho


松茸ぞふの声しばしば過而*、庭の穂蓼の露けく*、木ねり色付て*、さうまいわしのにほいまで*、秋も名残に移り、霜時雨の旅用意とて紙小あはせ縫したゝめ、檜木笠に書付して、三里に灸すえんと心打さはがるゝに、魔疝、精神を濁して*、いまだ富士の雪みむ事不定におぼへられ候。御待被成てちがふ事、興なきものに而御座候間*、不定と可思召候。此不定の二字、つれづれより御覧可成候*。先竹助殿御成人たくましく、機嫌能候間、可御意*
一、八月廿七日之御芳簡忝、名月感心仕候*。愚詠無御座候。両年かけて待付たる湖水に、発句なきもおかしく候。
一、石河浅右衛門に御逢被下候由忝*、此者門弟厚志之者にて、五三人の慥ものに而御座候間*、御懇意奉頼候。嵐蘭にも頓而御逢可下候由、二月之状、頃日金右衛門殿より御届候*。心むつかしく候間、重而以書状申承候。
一、此状*、少用之事申遣し候間、杉風内猪兵衛と申ものまで御届奉頼候。御用繁多之御中、色々やかましく申上候。ちかき比以書状申上候。此度及早筆候。 以上
 
     九月十二日                       ばせを
 
   曲水雅伯窓下

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 義仲寺(とおもわれる)から江戸勤番中の膳所藩菅沼曲水宛て書簡。江戸へ戻るのが健康上の理由から無理という知らせ。また、曲水が江戸古参の門弟「北鯤」と親交の出来たことを報告したのであろう、そのことについて喜んでいること。そして、同便に添付している添付書簡を 親族?の猪兵衛に渡してもらいたいことなどが、主なメッセージ。