芭蕉db
 
何某新八去年の春みまかりけるを、
父梅丸子のもとへ申しつかはし侍る
 

梅が香に昔の一字あはれなり

(笈日記)

(うめがかに むかしのいちじ あわれなり)

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 元禄7年2月13日。大垣の門人梅丸に宛てた書簡にある。梅丸の息子の死の報に接してそれを慰める目的で詠んだ句。

梅が香に昔の一字あはれなり

 再びめぐり来る春に梅の香が匂っています。しかし、あなたの御子息の死は過去のこと、それが昔という時間の中に閉じ込められていくのは何とつらい一字でありましょうか。
 業平の歌「
月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身一つはもとの身にして」(『古今集』)が、芭蕉の意識下にあるか?