芭蕉db
   うしろ向きたる僧の、数珠持ちて、
   「世の中をうしろになして山里に
   そむき果ててや墨染の袖 木食僧
   盤斎 自詠自画」と書す。なほそ
   の狂逸の俤も懐かしく覚えて

団扇もてあふがん人のうしろむき

(真蹟懐紙)

(うちわもて あおがんひとの うしろむき)

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 貞亨2年。『野ざらし紀行』のおり星崎(名古屋)の欄木三節宅で見せられた木食僧盤斎の自画像をテーマにして詠んで三節に与えた句。盤斎は松永貞徳の門下。隠者として古典注釈などに人生を注いだ人。絵は、盤斎の後ろ向きの自画像であったという。芭蕉は、隠者に対して強いシンパシーを持っていたので、その共感ぶりが句に表れている。

団扇もてあふがん人のうしろむき

  いかにも世を遁れて自適している盤斎の後ろを向いた自画像を見ていると、その背中を団扇であおいでやりたい気持ちになる。「団扇」であおぐのは、賞賛することだが、「仰ぐ」意味も掛けているので尊敬する心持が入っている。