芭蕉db
   午の年伊賀の山中  春興

種芋や花の盛りに売り歩く

(己が光)

(たねいもや はなのさかりに うりあるく)

芋種や花の盛りに売り歩く

(岨の古畑)

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 元禄3年2月。伊賀上野で。この句と、「春雨や二葉に萌ゆる茄子種」、「この種と思ひこなさじ唐辛子」を併せて三草<みくさ>(芋・唐辛子・茄子)の句はいずれも同時期伊賀上野での作。これは山岸半残らとの歌仙の発句。

種芋や花の盛りに売り歩く

 この芋は、もちろんサトイモのこと。桜花の盛り、人々が蝶よ花よと浮かれているこの時期に、野暮なことにも芋種を行商する百姓がいる。しかし、この芋が実る頃、仲秋の名月 =「芋名月」がやってくる。