芭蕉db
   苔清水

凍て解けて筆に汲み干す清水哉

(芭蕉庵小文庫)

(いてとけて ふでにくみほす しみずかな)

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 元禄元年春。『笈の小文』の旅の時、吉野のとくとくの泉にて。この前年名古屋で詠んだとされる「露凍てて筆に汲み干す清水哉」という類似句がある。

凍て解けて筆に汲み干す清水哉

 ようやく春が来てとくとくの泉も氷が解けた。しかし、その水量は少なくて筆に沁み取ったら無くなってしまうほどのものだ。「とくとくと落つる岩間の苔清水汲み干すほどもなき住ひかな」(読み人知らず=ただし、当時西行の歌とされていた)から取った発想であることは明らか。