芭蕉db

人々をしぐれよ宿は寒くとも

(蕉翁全伝)

(ひとびとを しぐれよやどは さむくとも)

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 元禄2年晩秋。伊賀上野の門弟配力<はいりき>亭にて伊賀蕉門の殆どが集まったとされる歌仙が催された。配力は杉野房通、伊賀藩作事目付け。

人々をしぐれよ宿は寒くとも

 配力亭で伊賀の連衆が集まって歌仙を開いている。皆、俳諧の世界に没入して先程来一座はしんとした静寂に包まれている。ここに時雨が皆を包んだらなお一層侘びの情緒が醸されるであろう。寒くてもその方がこの場に相応しい。実に芭蕉は時雨の詩人であった。