芭蕉db

葛の葉の面見せけり今朝の霜

(真蹟自画賛)

(くずのはの おもてみせけり けさのしも)

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 元禄4年冬。江戸にて。芭蕉が、長いこと江戸を離れていたことで、門人の間にもまたさまざまなことがあった。その筆頭は嵐雪の反乱であった。この頃、嵐雪は芭蕉にわびを入れ、両者は一応の修復があったのかどうか。葛の葉の裏表と、人間関係の裏表と、俳聖芭蕉にとっても俗世間の風は冷たいものがあった

葛の花 山梨県増穂町上高下の山道で撮影

葛の葉の面見せけり今朝の霜

 葛の葉が秋になってから一斉に白茶けた裏葉を見せるようになった。それが霜の降りた今朝みると一斉に表葉を見せている。単なる季節描写の嘱目吟だとする説と、嵐雪が再度蕉門に帰ってきたことを指す人事の争いを詠んだとする二説がある。ただ、葛の葉は霜が降りるころには落葉するのだが。
 葛は山野に自生するツル科の植物。根を乾燥してくず粉を作る。茎は敲いて繊維にした。葉は三葉、初秋に赤紫の美しい花をつける。これが秋の七草に数えられる。