芭蕉db

年の市線香買ひに出でばやな

(続虚栗)

(としのいち せんこうかいに いでばやな)

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 貞亨3年師走。

年の市線香買ひに出でばやな

 せわしないが何となく希望をもって迎える年の瀬。人々は来るべき新年の祝い事にしめ飾り、羽子板などを買いに街に繰り出す。そこには年の瀬の市が立って一層喧騒を極める。芭蕉のような隠者にとってこういう晴れがましさは縁が無い。縁は無いのにやっぱり浮き立つものが無いわけではない。まさか隠者の庵に注連縄でもないから、いっそ線香でも買ってこようかというのである。線香は年の市には並んではいまいが。