芭蕉db
   無常迅速

やがて死ぬけしきは見えず蝉の声

(真蹟句切/猿蓑/陸奥衛/芭蕉句集/

(やがてしぬ けしきはみえず せみのこえ)

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 元禄3年夏。幻住庵で秋之坊に示した句。前詞に「無常迅速」とあるとおりこの頃芭蕉は佛頂上人の影響か仏教への傾斜、殊に乞食僧への共感が強い。

やがて死ぬけしきは見えず蝉の声

 地上に現れてからは1週間の命といわれている蝉であるが、幻住庵でこの勢いの良い鳴き声を聞いていると、とてもそんなはかなさは伝わってこない。しかし、それこそがまさに「無常」というものなのであろう。


三重県上野市長田西蓮寺(牛久市森田武さん撮影)

 なお、他の句集『卯辰集』などには「やがて死ぬけしき見えず蝉の声」とあって、死を前提とした「無常」さが強調されるが、俳諧としてはやはり「は」がよい。