芭蕉db
   元旦

年々や猿に着せたる猿の面

(真蹟懐紙)

(としどしや さるにきせたる さるのめん)

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 元禄6年元旦。歳旦句。『三冊子』に、「此の歳旦、師のいはく『人同じ所に止まりて、同じ所に年々落ち入る事を悔やみて云ひ捨てたる』となり」とある。
 また、許六の『直指ノ伝』によれば、「師の曰く、すべて世の人、句の慥<たしか>を好む。上手はあやふき所に居れり。されば上手の上には、かならず仕損じおほし。愚老が歳旦「年々や猿に着せたる猿の面」は、まったく仕損じの句なり」と言ったという。

年々や猿に着せたる猿の面

 年が改まって正月ともなれば猿回しがやってくる。たとえその猿に新しい猿の面を被せてみたところで猿は猿。一向に中身が変わるわけではない。人もまた同じ。新しい年に改まって見せたところで何も変りばえはしないのだ。