芭蕉db

炉開きや左官老い行く鬢の霜

(韻塞)

ろびらきや さかんおいゆく びんのしも)

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 元禄5年10月1日頃。炉開きとは、夏中塞いでおいた囲炉裏を開いて使い始めること。この折、囲炉裏の土壁の修理などをする。芭蕉は、プロの左官に炉開きを依頼していたようだ。そして、この際、壁の繕いなどもさせていたのであろう。

炉開きや左官老い行く鬢の霜

 長年付き合ってきた左官が、黙々と炉開きの炉の修理をしている。よく見ると彼の鬢には白いものが目立つようになった。若い頃の左官の元気な姿を見知っているだけに、左官の鬢の霜は、そのまま己の老の姿でもある。折りしも季節は冬のとば口だが、自分の人生の冬の入り口でもある。