芭蕉db
 納涼二句

さざ波や風の薫の相拍子

(笈日記)

(さざなみや かぜのかおりの あいびょうし)

湖や暑さを惜しむ雲の峰

(笈日記)

(みずうみや あつさをおしむ くものみね)

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 元禄7年5月。最後の上方西上の折り、膳所の能役者游刀宅で読んだ2句。

さざ波や風の薫の相拍子

 「さざなみ」は滋賀についた枕詞であり、同時に琵琶湖に立つさざなみを表す。湖面を渡る五月の風は香を伴って吹いてくる。その風に相の手の拍子をつけるように小波が揺れる。能大夫游刀への挨拶吟から「相拍子」という能の用語が使われている。

湖や暑さを惜しむ雲の峰

 夕暮、一日の暑さが嘘のように湖面を渡るそよ風が涼しい。しかし、紅く染まった比叡の峰の雲は、今日一日の暑さの名残を惜しむように光っている。夕暮の嘱目吟。


大津市丸の内の膳所城跡公園の「湖や・・・」の句碑。牛久市森田武さん提供