芭蕉db

風色やしどろに植ゑし庭の秋

(蕉翁句集草稿)

(かざいろや しどろにうえし にわのあき)

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 元禄7年、51歳。伊賀上野の藤堂藩士渡辺長兵衛守寿亭で。長兵衛は俳号玄虎。『芭蕉翁発句集』には「此句、藤堂氏玄虎子に逢はれし時、庭半ばに作りたるを云へり。表六句あり」とあるから、これが本当だとすれば玄虎亭では庭を改修か何ぞしていて、そこへ芭蕉は招かれたことになる。「しどろに植えし」は工事中の庭の植栽を言ったものであろう。

風色やしどろに植ゑし庭の秋

 修築中の庭の木々の間をとおる風の色は、これぞ秋の風だ。「風色」というとき、多くは躍動的な薫風香る初夏の風をいうが、ここでは秋の風の色となっている。改修中の庭の木々のまばらな状況はどことなく淋しげで、それは秋の色としかいいようがなかったのであろう。