芭蕉db

煮麺の下焚き立つる夜寒哉

(葛の松原)

(にうめんの したたきたつる よざむかな)

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 元禄4年晩秋。膳所の菅沼曲水亭にて、「夜寒」という題で句会が催された。曲水夫人が座の人々に煮麺を振舞ったのであろう。

煮麺の下焚きたつる夜寒哉

  煮麺とは、ソーメンを茹でて醤油の味付けにネギなどの野菜を加えて食べたもの。現在のウドンである。秋の夜寒ともなると食べたくなる季節の食材だったのである。煮麺をつくるというので竈の火を煽っている。その火 花が鍋の脇から噴出してくる情景は一層秋の夜寒をかき立てるのでもある。