芭蕉db

なまぐさし小菜葱が上の鮠の腸

(笈日記)

(なまぐさし おなぎがうえの はやのわた)

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 元禄6年夏。この句に関しては、支考の『笈日記』によれば、元禄7年去来の別宅桃花坊で芭蕉に会った折、支考がこの句について残暑の景であると言ったところ、芭蕉から「阿叟もいとよしとは申されしなり」と言われたとある。

なまぐさし小菜葱が上の鮠の腸

 「菜葱<なぎ>」は、川に生える水草でミズアオイ科のコナギのことで、ツバキバ、ツバキグサ、ナギ、イモグサ、ササナギ、ミズナギなどともいう。美しい紫の花が咲くが、農業上は悪名高き田の草で、農民からは最も嫌がられる。 鮠は<はや>または<はえ>と読む。淡水に棲むハヤのこと。水草を掻き出したとき、そこに潜んでいたハヤが逃げ遅れて日干しにあったのだろうか。それが腐って悪臭を放っている。どこにでもある情景を写し取ることで「軽み」を実践しているのである。