芭蕉db

蓑虫の音を聞きに来よ草の庵

(続虚栗)

(みのむしの ねをききにこよ くさのいお)


「みのむしの」画讃 許六画

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 貞亨4年秋、深川芭蕉庵での作。芭蕉は、この句をもって秋の虫の音を聴く会を開くべく俳友に芭蕉庵へ来るようにさそったのである。このとき、嵐雪にも届けられたが、かれは、「蓑虫を聞きに行く」なるものを書いて「何も音無し稲うちくふて螽<いなご>」なる句を添えたという話が残っている。
 なお、伊賀上野の服部土芳は、貞亨5年3月4日庵を開き、些中庵<さちゅうあん>と名づけたが、3月11日、折りしも『笈の小文』の途次伊賀上野に立ち寄った芭蕉をそこに招き句会を開いた。このとき芭蕉は一枚の絵を土芳にプレゼントし、その画讃にこの句があったので、特に蕉翁に許しを得て、この庵を「蓑虫庵」と改名したという。また、このときの句会の發句がこの句であったので、庵名をこのように変えたという説もあって判然としない。

蓑虫の音を聞きに来よ草の庵

 清少納言によれば、蓑虫は「ちちよ、ちちよ」と鳴くことになっているのである。そこでみなさん、私の庵に来て蓑虫の声を聴きませんか、というのである。嵐雪の言うのが正しい。


東京墨田区旧安田庭園の句碑(牛久市森田武さん提供)