芭蕉db
   定光阿闍梨之覓
   あなたふと、あなたふと。笠も貴
   し、蓑も貴し。いかなる人が語り
   伝へ、いづれの人か写しとどめて、
   千歳の幻、今ここに現ず。その形
   あるときは、魂またここにあらん。
   蓑も貴し、笠も貴し

たふとさや雪降らぬ日も蓑と笠

(真蹟懐紙)

(とうとさや ゆきふらぬひも みのとかさ)

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 元禄3年師走。落剥した小野小町の絵姿「卒都婆小町」を見ての作といわれている。「応定光阿闍梨之覓」<じょうこうあじゃりのもとめにおうず>の定光は三井寺の 別院定光坊の住職実永阿闍梨のこと。

たふとさや雪降らぬ日も蓑と笠

 この絵の中の小町は、雪も降っていないのに笠と蓑をつけた落ちぶれた姿をしている。しかし、その若いとき絶世の美人ともてはやされた美しさもさりながらこの零落した姿もなお貴さをたたえていることだ。
 芭蕉の乞食趣味が表出されている。