芭蕉db
   小倉の山院

松杉をほめてや風のかをる音

(杉風真蹟書簡)

(まつすぎを ほめてやかぜの かおるおと)

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 死の年、元禄7年夏、京都嵯峨の落柿舎滞在中の作とされる。「小倉の山院」とは、藤原定家の小倉山の山荘跡に作られたといわれている 日蓮宗常寂光寺のこと。ここには、定家が植えたといわれている「時雨の松」という有名な松の木があった。 ただし、定家の時代には、芭蕉の時代のように松や杉を庭木として尊重する風はあまり無く、紅梅や柳などが殊の外に珍重された。松や杉、特に黒松などは武士階級の世になってから珍重される樹木であった。

松杉をほめてや風のかをる音

  藤原定家の歌「頼むかなその名も知らぬ深山木<みやまぎ>に知る人得たる松と杉とを」(『拾遺愚草』)を引いて作った句。
 一陣の夏の風が吹いていく。まるで定家が植えた松や杉をいとおしむように


岐阜市加納清水信浄寺境内の句碑。牛久市森田武さん提供