芭蕉db
   桑名に遊びて熱田に至る

遊び来ぬ鰒釣りかねて七里まで

(熱田皺筥物語)

(あそびきぬ ふくつりかねて しちりまで)

鰒釣らん李陵七里の浪の雪

桜下文集


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 貞亨元年。『野ざらし紀行』で桑名から熱田への船旅。

遊び来ぬ鰒釣りかねて七里まで

 桑名から船に乗って七里についた。そういえば子陵の故事と同じように河豚釣りをしたのだが収穫は皆無であった。私も子陵の気分になってきた。
 ここに「七里」は桑名と熱田の距離から転じてこの海路を七里と呼ぶ風習があった。
 ところで芭蕉は本当にフグを釣ったのかというと、もちろん釣ってなどいない。この時代フグは人々の食する魚ではなかったのである。

鰒釣らん李陵七里の浪の雪

 これは、上の句の初案らしい。李陵は子陵の間違い。中国『後漢書』にある故事。子陵が退官した後、七里瀬というところで釣三昧をしたとあるによる。「七里」の縁で上の句になったものらしい。