芭蕉db
   支梁亭口切

口切に堺の庭ぞなつかしき

(俳諧深川)

(くちきりに さかいのにわぞ なつかしき)

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 元禄5年初冬。口切りは、茶壷の口を切る茶の湯の行事。初夏に採取した茶の葉を茶壷に入れて一夏涼しいところで過ごしたものを冬になって開封し、これを臼で挽いて抹茶とする。これを口切の茶の湯とした。ここに支梁なる人物、いづれ江戸の豪商などの数奇者だろうが、なぜか伝不詳。

口切に堺の庭ぞなつかしき

 支梁の口切の茶会に招かれたが、その数寄を尽くした屋敷を見るにつけ、堺の利休の茶席を思い出すことだ。支梁の招待に対する挨拶吟。別に、支梁の成金趣味の茶席に嫌気した芭蕉が、わざとそれにつけても利休の茶室はすばらしいと厭味を言ったとする解釈があるが取らない。お世辞を含む挨拶吟と見るのが素直な解釈であろう。