芭蕉db

昼顔に米搗き涼むあはれなり

(続の原)

(ひるがおに こめつきすずむ あわれなり)

夕顔に米搗き休むあはれなり

(あつめ句)

夕顔に米搗き休むあはれ哉

(真蹟懐紙)

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  天和年間の作だが、制作年次の詳細が不明。このような句が15句ある。ただし、改作をつづけ決定稿は貞亨4年頃とされている。

昼顔に米搗き涼むあはれなり

 「米搗き」は、江戸時代大店などでは専門の精米職人を雇い上げて精米していた。主として越後や越中辺りからの出稼ぎであったらしい。
 暑い夏の昼下がり、ヒルガオがぐったりしながら咲いている。仕事に疲れた米搗きが一休みしている。
 「夕顔に・・」で始まる句は初案であろう。夕顔は、ウリ科のつる性一年草。アフリカ・アジアの熱帯地方原産。茎は長く伸び、葉は円心形。雌雄同株。夏の夕方、先が五裂した白色の花を開く。果実は大形の円柱形あるいは扁球形で、若いものは干瓢(かんぴよう)の原料とし、また食用。熟果は器や置物に加工する。黄昏草(たそがれぐさ)(『大字林』)。夕顔の記号論的な意味には貧しさや隠遁、世捨てといった意味合いがある。米搗きの生活の貧しさと出稼ぎ者の自閉的な生活状況が、夕顔によって暗示される。それが「あわれ哉」となったのであろう。
 昼顔:ヒルガオ科の蔓性多年草。夏、アサガオに似て小形の淡紅色の漏斗状花が昼開いて夕刻しぼむ。全体を乾して利尿剤とし、若芽は食用とする。(広辞苑より)