芭蕉db
   雪の夜の戯れに題を探りて「米
   買」の二字を得たり

米買ひに雪の袋や投頭巾

(路通真蹟懐紙)

(こめかいに ゆきのふくろや なげずきん)

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 元禄元年12月17日。『深川八貧』にもある。この日、芭蕉は八貧たちと句題を決めて句会を開いた。

米買ひに雪の袋や投頭巾

 投頭巾は、江戸の飴売りなどが頭に着けた帽子。米を買いに行こうと思ったらあいにく雪が降ってきた。この投頭巾をかぶって米買いに行こうか、というのである。「雪」と「行く」をかけて冗談めかした軽快な句。気の置けない八貧なる友人たちを迎えて上機嫌の作者がいる。
 ところで、深川の八貧とは、依水<いすい>、苔水<たいすい>、泥芹<でいきん>、路通<ろつう>、曾良<そら>、友五<ゆうご>、夕菊<ゆうぎく>、加えて芭蕉である。「貧」を主題とした句会では、皆がそれぞれ眞木買い、水汲み、めしたき、酒買い、炭買い、茶買い、豆腐買いなどをするという設定で句を詠んだ。芭蕉は米買いが当って、この句を詠んだのである。