芭蕉db

胡蝶にもならで秋経る菜虫哉

(後の旅)

(こちょうにも ならであきふる なむしかな)

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 元禄2年8月21日頃。『奥の細道』旅中、大垣近藤如行宅にて。『奥の細道』という大きな旅を終えてほっとした気のゆるみから欝症状にでもなったのかもしれない。

胡蝶にもならで秋経る菜虫哉

 菜虫とは青虫のこと。多くの青虫は華やかな蝶になって空に舞っていくというのに、この菜虫は秋になっても蝶にもならずに虫のままでいる。
 今は秋。大きな旅を終えたとは言うものの、芭蕉は相変わらず変態して羽化するわけでもなく、薄汚い墨衣のままであった。それは胡蝶になれない己の真の姿なのである。
 なお、この句に如行の脇は、

種は淋しき茄子一本   如行

であった。